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大阪地方裁判所 昭和47年(わ)1261号 判決 1972年11月30日

本店所在地

大阪市東淀川区田川通六丁目一九番地

商号

竹本電機計器株式会社

代表者

三宅幸雄

本籍および住居

大阪市東淀川区田川通六丁目一九番地

職業

竹本電機計器株式会社代表取締役

氏名

三宅幸雄

大正六年九月五日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官忠海弘一出席して審理し、次のように判決する。

主文

被告人竹本電機計器株式会社を罰金九〇〇万円に、被告人三宅幸雄を罰金三〇〇万円に処する。

被告人三宅幸雄が右罰金を完納できないときは、金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人両名の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人竹本電機計器株式会社は大阪市東淀川区田川通六丁目一九番地に本店をおき電機計器等の製造販売業を営むもの、被告人三宅幸雄は同会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、被告人三宅幸雄は同会社の業務に関し法人税を免れようと企て、

第一、昭和四四年四月一日から同四五年三月三一日までの事業年度における所得金額が一二八、九〇九、〇九〇円でこれに対する法人税額が四三、四五七、七〇〇円であるのに公表経理上売上の一部を除外するなどの行為により右所得金額中六四、二〇六、六二六円を秘匿したうえ、昭和四五年六月一日同市東淀川区木川東之町所在東淀川税務署において、同税務署長に対し右事業年度の所轄金額が六四、七〇二、四六四円でこれに対する法人税額が二〇、九九〇、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により法人税二二、四六七、〇〇〇円を免れた、

第二、昭和四五年四月一日から同四六年三月三一日までの事業年度における所得金額が八三、八七〇、六八四円でこれに対する法人税額が二九、二四九、六〇〇円であるのに、前同様の行為により右所得金額中五四、四九六、一七三円を秘匿したうえ、昭和四六年五月三一日前記東淀川税務署において、同税務署長に対し右事業年度の所得金額が二九、三七四、五一一円でこれに対する法人税額が九、二三七、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行偽により法人税二〇、〇一一、九〇〇円を免れた。

ものであつた。

(証拠の標目)

判示第一の事実について、

一、大矢知高司の収税官吏に対する昭和四六年一一月四日付、同月二二日付質問てん末書

一、浜田英雄、犬石養太郎作成の確認書各一通

一、大矢知高司作成の「売上除外高一覧表」および「売上伝票総勘定元帳対比表」と題する書面各一通(請求番号1・2)

判示第二の事実について、

一、大矢知高司の収税官吏に対する昭和四六年一〇月二五日付、同年一一月二日付、同月二七日付、同月三〇日付、同年一二月一四日付各質問てん末書

一、阿部清、是常長和、村川正明、西山治男、北阪保三作成の確認書各一通

一、大矢知高司作成の昭和四六年一二月二日付確認書および「四六年三月期製品半制品照合事績」、「四六年三月期製品照合事績」、「四六年三月期半製品照合事績」、「四六年三月期部品材料たな卸照合事績」(二通)、「四六年三月期部品材料たな卸公表分中、公表仕掛品半製品照合事績、公表済のうち重複分」と題する各書面(請求番号16、17、18、20、21、22)

判示全事実について、

一、登記官作成の商業登記簿謄本

一、被告会社の定款

一、東淀川税務署長山戸久夫作成の証明書二通

一、大矢知高司の収税官吏に対する昭和四六年九月三日付、同月六日、同月一三日付、同年一〇月二六日付、同年一一月二二日付、同月二六日付、同年一二月一三日付各質問てん末書

一、大矢知高司作成の昭和四六年九月三日付確認書

一、国税査察官福崎敬学作成の銀行調査書類綴および国税査察官調査書類綴

一、被告人の収税官吏に対する質問てん末書および検察官に対する供述調書

一、押収してある総勘定元帳二綴(昭和四七年押第五八二号の一、二)、受取手形帳二冊(同押号の三、四)、銀行帳五冊(同押号の五)、仕訳帳八冊(同押号の六)、買掛金台帳八冊(同押号の七から一〇)、売上高帳一綴(同押号の一一)、得意先勘定元帳八綴(同押号の一二と一四)、売掛金勘定元帳八綴(同押号の一三と一五)、工場勘定棚卸表七綴(同押号の一六)、売上伝票一二綴(同押号の一七と一八)、売上明細関係書類綴一綴(同押号の一九)、小切手半片五冊分一綴(同押号の二〇)、七一年ノート綴一冊(同押号の二一)、メモ一枚(同押号の二二)、たな卸原始記録五綴分一箱(同押号の二三)、普通預金帳解約済分八冊(同押号の二四)、普通預金通帳四通(同押号の二五と二六)

(法令の適用)

被告人らの判示所為はいずれも法人税法一五九条、七四条一項二号(法人の処罰につき、なお一六四条一項)に該当するところ、被告会社については以上の罪は刑法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により所定罰金額を合算した金額の範囲において被告会社を罰金九〇〇万円に処し、また被告三宅幸雄については所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上の罰は同法四五条前段の併合罪なので同法四八条二項により所定罰金額を合算した金額の範囲内で同被告人を罰金三〇〇万円に処し、同法一八条を適用して、右罰金を完納できないときは金一万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、なお刑事訴訟法一八一条一項本文により訴訟費用は全部被告人両名に負担させることとする。

(弁護人の主張に対する判断)

一、弁護人は、検察官主張の棚卸資産除外分に関する犯則所得上の取扱(計算)には誤謬があり、即ち被告会社の昭和四四年四月一日から翌四五年三月末日までの事業年度(以下「第一期」という。)における棚卸資産除外を同事業年度における犯則所得に計上しながら、更に同年四月一日から翌四六年三月末日までの事業年度(以下「第二期」という。)においても犯則所得に計上しており、これは明らかに同一犯則事実を二度犯則所得と看做す違法不当の取扱いであると主張し、その理由として別紙弁論要旨(「補充」とも)のとおり論述している。

二、記録によると、被告会社は第一期の確定申告書において同期の法人所得として金六四、七〇二、四六四円を申告したところ、所轄の東淀川税務署長は昭和四五年一一月三〇日所得金額等の計算に誤りがあるとして所得に金一八、七三六、〇二三円を加算する旨の更正決定をしたが、その内訳は製品期末棚卸除外額一〇、五〇二、八〇〇円、仕掛品計上もれ期末たな卸高一四七、八四〇円(うち本件で問題になるのは金三八、四一七円である。)等であること、この製品除外額一〇、五〇二、八〇〇円と仕掛品除外額三八、四一七円の合計一〇、五四一、二一七円は第一期の犯則所得に該当するものであるが(なお、その後の査察官調査により、これらを含めた判示金額二〇、九九〇、七〇〇円が第一期における犯則所得となつた)、被告会社は第二期の確定申告書においては既に更正決定のあつた前記一〇、五四一、二一七円(以下「係争犯則金」という。)をいわゆる公表受入れをなしこれを減算項目として調理したうえ同期の法人所得として金二九、三七四、五一一円の申告をしたが、その後査察官調査の結果判示金額四三、九五四、九五六円が第二期における犯則所得とされたことが認められる。そして、前記係争犯則金の第二期税理上の取扱をみると、「支出の部、公表金額」欄に係争犯則金一〇、五四一、二一七円が計上されているほか、「支出の部」と「収入の部」の各犯則金額欄に同額の計上すなわち両建があるため(検察官冒頭陳述中、第二期期首棚卸の項参照)、「支出の部」の計上はとも角として「収入の部」の計上はこれによつて第二期においても係争犯則金が再度同期の犯則金額を構成するに至つたものと考えられなくはなく、これは第一期の所得につき更正決定があつたことによる誤謬ではないかとの疑問が生じ、これが弁護人の主張される基幹をなすものと推察される。

三、そこで、この点につき検討する。

(一)  本件の如く、第一期の法人税確定申告に対し第二期の期中に棚卸資産除外を理由として更正決定があり第一期の増益が認められた場合において、右棚卸資産除外がいわゆる犯則行為を構成するときは、その犯則性は第一期法人税確定申告時に直ちに確定し爾後の更正決定によりその犯則性に消長を及ぼすことはないし、また第二期の期中における第一期法人所得に対する更正決定である以上、右更正決定が第二期の法人所得やその犯則性に影響を及ぼすことも通常予想できないところである。更に一般決算上の損益算出方法について考えてみても、第一期と第二期の各損益算出は各個に即ち各事業年度毎に算出可能なこと爾明であるから、相互に損益計算上影響を及ぼすことは通常ないわけである。

(二)  しかしながら、本件の如く、商品の売上利益の算出に際し仕入高と期首期末の各棚卸高を比較勘案して商品の売上原価を計算しようとする方式を採用している場合にあつては、第一期における商品棚卸除外は第二期の決算上その損益計算に影響を及ぼすところがある。即ち、第一期において犯則行為たる棚卸資産除外があると、その除外高だけ売上原価が嵩み売上利益の減少を来たすところ、この除外高が発見されるとそれだけ期末棚卸高が増加し売上利益もそれだけ増加することは自明であるところ、第二期における期首棚卸高は第一期の期末棚卸高と同一であるので、もし棚卸資産除外分が明らかなときはこれを加算した金高を以て第二期期首棚卸高となすべきであり、しかも期首棚卸高はいわゆる減算項目(「支出の部」の項目)をなすから、第一期の棚卸除外高は第二期においてはそれだけ減益の働らきをし、若し棚卸除外高を第二期において考慮しないときはその分だけ不当仮空の増益が表われることになるわけである。この意味において第一期の決算内容が第二期のそれに影響があるといえるわけである。

(三)  本件においても第一期における棚卸除外高たる係争犯則金が現に同期の損益計算上すなわち犯則取扱上において増益とされたのであつたから、第二期においては期首棚卸高に組入れて係争犯則金相当分を減算して損益計算さるべきであり、いずれにしても第二期において係争犯則金相当分を減算のうえ犯則所得を算出する必要がある。そこでこれを本件につき具体的に検討してみるに、証人福崎敬学の証言および国税査察官調査書類綴、東淀川税務署長作成の証明書二通(被告会社の法人税確定申告書)などによると、前記係争犯則金一〇、五四一、二一七円については第二期決算の減算項目として、即ち「支出の部、犯則金額」の個所において考慮し、右金高だけ減算して犯則金額を計算すべきものであるが、前記更正決定があり右金高が第二期法人税確定申告書において公表金額中に受入れられ減算されていたので、これを受継いで犯則金額計算に当つてはこれを「支出の部、犯則金額」の個所のほか「支出の部、公表金額」の個所にも同額を計上し、そうすると「支出の部」即ち減算項目に同一金高が「犯則金額」の個所と「公表金額」の個所と二つの個所に記帳され重複となるから、これに対応して「収入の部」即ち加算項目にも一個所同一金高を立てる必要があるが、その「収入の部、公表金額」にこれを組入れ記帳することは調理上不可能であるから(組入れ記帳することは確定申告書にないことを実行することになり、事実に反する結果を来たす)、「収入の部、犯則金額」に同一金高を組入れて調整したこと、その結果は記帳上別表(一)のとおりとなることが認められる。そうすると第二期において係争犯則金全額が犯則計算上実質的に減算項目として考慮され、これを減算したうえ判示犯則額が計上されたものというべきであるから、この点に関し更に控除すべき余地は少しも存しないところである。

附言すると、被告会社は第二期の確定申告書において既に係争犯則金全額を減算控除して同期の法人所得を判示のとおり金二九、三七四、五一一円と公表しているものであり、これをふまえて真実の法人所得犯則所得等を判示のとおり認定したのであつて、かつまた前段所述のとおり第一期の法人所得、犯則所得等が前示更正決定により何らの影響を受けるものでなく判示認定のとおりである以上、更に減算すべきものは何もないわけである。

(四)  弁護人は、第一期において犯則所得計算上増益即ち加算項目とみなされた棚卸除外高については第二期の犯則所得計算上必ず犯則所得の減算項目として即ち「支出の部、犯則金額」の個所で考慮さるべきであると主張されるようであるが、それは前記の更正決定のない通常の犯則事案においてのことであつて(換言すれば、その場合には、第一期においての棚卸除外であるという性質上から、被告会社において第二期確定申告書中に所請公表受入れをなしうべくもないため、第二期の犯則所得計算上修正減算項目即ち「支出の部、犯則金額」の個所でこれが減算の配慮をなすわけである)、これと事案を異にして前記の更正決定があつて第二期の確定申告書の減算項目において公表受入がある以上、更に犯則所得計算上考慮するものは何も存在せず、右主張は所詮会計計算上の操作方法(支出の部の公表金額欄にのみ記入すれば足りるものを、更に犯則金額欄の収入、支出双方へ両建したこと-所請加算減算法)を攻撃しているに過ぎず相当性を欠き、結局一個の法人所得減算事由を以て公表金額欄、犯則金額欄、双方に二重に減算を試みようというものであつて、不当な主張であり彩用することはできない。

よつて、主文のように判決する。

(裁判官 砂山一郎)

右は謄本である。

昭和四七年一二月二五日

大阪地方裁判所

裁判所書記官 田村剛

弁論要旨

一、被告人等は本件被告事件につき、国税局の査察調査着手以来、その脱税の事実を率直に認めその調査並びに検察庁における捜査につき、早期解決を図るため終始協力し、局側より指示のあつた所得金額につき直ちに昭和四七年三月六日所轄署へ修正申告をした。

二、被告人等は後述のような事情があつたにせよ逋脱という事件を犯したことにつき深く反省しており、当公判廷においても当初よりその逋脱の事実はこれを認めて争わないところであります。

然しながら、局側の犯則所得計算上に問題点があるのでこれに疑問を懐き、当裁判所の正当な御判断を仰ぎ度く、かく主張している次第であります。

これは昭和四五年四月一日より昭和四六年三月三一日までの事業年度(第二期と略称す)において、期首製品たな卸高の犯則所得として金一〇、五〇二、八〇〇円及び三八、四一七円(期首仕掛品)を計上しその説明として「この金額は昭和四五年三月期の税務否認されたたな卸除外分について確定申告書により公表に受入れ減算されていたので、直接減算法によらないで加算減算法により両建計上したものである。」としている。

然しながら、右犯則所得として金一〇、五〇二、八〇〇円及び三八、四一七円を計上したものは間違いである。次にその理由を述べる。

(但し、期首仕掛品の金三八、四一七円は期首製品たな卸と同一理由であるから省略する。)

1. 昭和四四年四月一日より昭和四五年三月三一日までの事業年度(第一期と略称す)において所轄税務署の調査で税務否認(更正)されたもので、本件で問題となつている製品たな卸除外分金一〇、五〇二、八〇〇円は此回の査察調査においてこれを犯則所得として認識し、別に同査察調査において発見した製品たな卸除外分金四、七八六、四八四円との合計金一五、二八九、二八四円を同期の期末製品たな卸高として犯則所得に計上した。

然るに、右金一〇、五〇二、八〇〇円が第二期において再度犯則所得として計上されている。

先ず第一点として、此のように第一期に犯則所得とされた同じものが第二期において再度犯則所得として計上されることがあり得るだろうか。犯則所得とは刑事罰を対象としたものである筈である。

2. 「四五年三月期に税務否認(更正)されたたな卸除外分を第二期の公表に受入減算されたので、これを両建した。」旨の理由については、局側の福崎証人は当然のこととして、これを明らかにしないが恐らく、査察調査としては査察において調査したもののみにつき、その犯則及び所得計算して整理するため、即ち査察調査の結果はどのようになつたか、という点を把握するため前記税務否認(更正)分は一応考慮外とする。そうしてその計算が終つた後、右更正により現実に納税された分については、税務計算の際に差引こう、かような思考過程に基くものではないかと思われる。

こうして見れば、査察調査には直接の関係のない前記更正のため、第二期の公表に受入れ減算することは査察調査の計算上差しさわりとなるので、これと相手勘定に同額の両建をして査察調査の計算外としたことは肯ける。

この点は、現実に第一期の修正申告の税額計算において前記更正金額相当分を減算している点からみても明らかであろう。

然りとすれば、全く犯則に関係のない公表受入分と再建する相手勘定に犯則として金一〇、五〇二、八〇〇円及び三八、四一七円を計上しなければならない理由は全くない。

又、別の面より考えれば若し更正がなければその結果第二期の犯則金額は金四三、九五四、九五六円となるのであるが、たまたま査察調査前に更正があつたため刑事罰の対象である犯則金額が増加するいわれはないからである

弁論要旨(補充)

一、税務計算における総所得と公訴事実としての総所得は必ずしも一致しない。税務計算における総所得とは、申告所得に増差所得(当期増減金額)を加えたものであるが、公訴事実としての総所得は申告所得に犯則金額を加えたものである。増差所得は、たいてい税務計算上の数額であるに反し、犯則所得は犯意に結びつく金額であるから、増差所得とは若干の差があり、その差は通常「その他所得」となつて現われる。

1. 本件において税務計算上の総所得は

第一期 一四〇、七〇五、八一二円

第二期 八五、五六五、二三六円

2. 公訴事実の総所得は

第一期 一二八、九〇九、〇九〇円

第二期 七三、三二九、四五七円

となる。

右第二期において、犯則所得(秘匿金額)が公訴事実の秘匿金額金五四、四九六、一七三円より少く、その差一〇、五四一、二一七円は局側の犯則所得計算の誤りであることに基くことは、すでに述べたとおりである。

二、次に被告主張の犯則金額が正しいことにつき、これを検算して裏付することにする。

1. 第一期第二期を通算して算出したが、その結果、犯則所得の合計は金一〇八、一六一、五八二円となり、前記被告主張の犯則所得一〇八、一六一、五八二円と一致する。(別表(二)所得比較表参照)。

局側の計算による第一期第二期合計金一一八、七〇二、七九九円との差一〇、五四一、二一七円については前述のとおりである。

第一期第二期通算修正損益計算書における公表金額は一一二、八一二、九九八円で国税局計算の第一期第二期の合計九四、〇七六、九七五円との差、金一八、七三六、〇二三円は次の理由による。

即ち、第一期第二期を通算するのであるから、第一期の期末、第二期の期首は何れも期中となる。即ち、第一期の期首は通算の期首であり、第二期の期末が通算の期末となるからである。

然らば、これ迄の計算書による第二期期首への公表受入(第一期更正に基く)も不可能となるから、その結果公表上右受入はなかつたことになるので、その金額が右一八、七三六、〇二三円である。

これら通算の結果は、後述の「更正のない場合の修正損益計算とその性質を同じうすることになる。

又、増差所得(第二表所得比較表を参照)において局側の計算と通算との差一八、七三六、〇二三円は局側の計算では第一期の更正に基く第二期期首への一八、七三六、〇二三円公表受入額を否認し、これと両建てしているが、通算においては右に述べた如く第二期期首にはあり得ず、期中となるため前記公表受入れが出来ないことにより、その両建‥否認(加算)‥することが出来ないため、右公表受入れ金額一八、七三六、〇二三円相当額が減算されることになる。

2. 検算の第二として

査察調査以前の更正の有無によつて、客観的に存在すべき犯則所得(刑事罰の対象となるもの)に増減がある筈がない。ことはすでに述べた。

第三表(1)の更正が無かつた場合の所得計算は第四表のA1修正損益計算書の結果を示すものであるが、第一期の犯則所得は金六四、二〇六、六二六円となり、第二期の犯則所得は金四三、九五四、九五七円となり、被告主張の犯則所得の金額と一致する。

公表所得金額が局側の計算より金一八、七三六、〇二三円多くなるのは、第一期に更正がないため、第二期への公表受入れ(減算)額金一八、七三六、〇二三円がないから右相当額が増加した訳である。

3. 検算の第三として

現実に更正があつた場合と比較する。

第三表の(2)更正があつた場合の所得計算によると、第一期の犯則所得は同じく金六四、二〇六、六二六円であるが、公表金額としては申告所得金六四、七〇二、四六四円の外に現実に更正された所得金額金一八、七三六、〇二三円が存在する訳であるから、これを加算せざるお得ない。するとこの場合における総計金一四七、六四五一一三円となる。

第二期の申告所得金二九、三七四、五一一円は右の如く現実の更正(金一八、七三六、〇二三)があり、その所得が税務署において計算された結果、第二期の公表期首に同類を受入れ減算された結果である。(減算されなければ金四八、一一〇、五三四円となる。‥前述のとおり)

これに被告主張の犯則所得金四三、九五四、九五六円を加えると金七三、三二九、四六七円となり、この総計を第一期第二期合計すると金二二〇、九七四、五八〇円となる。

然るに、前項で述べた「更正がなかつた場合の所得計算による。」総所得第一期第二期を通算すると、金二二〇、九七四、五八〇円となり、そのため二期を通じた総計は「更正がなかつた場合」と「更正があつた場合」と完全に一致し、各公表所得金額、犯則所得金額の合計額も夫々一致するのみならず、前記の通算修正損益計算書の各合計額と一致する(前記所得比較表を参照)。

(注) 右に「通算修正損益計算書」とは弁護人提出の弁論要旨(補充)添付の第一表と同じであり、判示判断と直接関係がないので貼付を省略する。

また別表(二)の読取りの便宜のため、弁護人提出にかかる別表(三)を掲げる。

別表(一) 修正損益計算書〔加算減算法〕

<省略>

(注) 上表中、◎印は確定申告中の減算項目をその儘転記したもの、※印は加算減算法の結果として結果的に両建と看做させるものを示す。

なお、仕掛金除外額38,417円についても上表と同じになるので煩雑をさけるため表記を省略した。

別表(二) 所得比較表

<省略>

別表(三)

訴状による所得明細

<省略>

(1) 更正が無かつた場合の所得計算

<省略>

(2) 更正が有つた場合の所得計算

<省略>

〔結集〕 所得合計において(1)及び(2)は変らない。

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